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法華狼の日記

2014-11-14 上げたのは1日後

[][][]「嘘」が吉田清治証言のことだとして、「嘘ついて30年以上放置してた奴」はどこにいるのだろう

nekoguruma氏の露骨な二枚舌をフォロワーは気にならないのだろうか - 法華狼の日記

従軍慰安婦問題について日本軍の責任を指摘したら、女性の人権問題でもあることを指摘できなくなる……わけがない - 法華狼の日記

上記の2エントリで批判した@氏が、下記のようにツイートしていた*1

朝日新聞に何も責任がないとか、批判するべきではないとか、誰が主張しているのだろうか。少なくともnekoguruma氏のツイートは表現や事実で誤りがある。どのような責任が朝日新聞にあるかと論じる時、それこそnekoguruma氏のような認識を基礎にしては説得力がない。

すでに冒頭の2エントリで批判した範囲におさまるような主張だが、ついでに紹介したい情報もあるので、重ねて批判したい。


まず、「嘘をついて」という表現を字義通り解釈すれば、吉田氏が対象になるはずだ。しかし朝日検証でも紹介されているように2000年に亡くなっている。

「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断:朝日新聞デジタル

吉田氏は00年7月に死去したという。

済州島での奴隷狩り証言が1982年の講演から確認されているわけだが、それから30年となると、死後は物理的に放置せざるをえない。もっとも、1990年代から吉見義明教授らから質問されており、その回答によって歴史資料としては採用されなくなっていた。

もし放置したと批判している対象が朝日新聞だとすれば、そもそも主体的に嘘をついたわけではない。問えるのは、他メディアと同じく伝えたり広めたりした責任だ。それに朝日検証にあるように、朝日新聞が真偽ふたしかと報じたのは1997年のこと。

 97年3月31日の特集記事のための取材の際、吉田氏は東京社会部記者(57)との面会を拒否。虚偽ではないかという報道があることを電話で問うと「体験をそのまま書いた」と答えた。済州島でも取材し裏付けは得られなかったが、吉田氏の証言が虚偽だという確証がなかったため、「真偽は確認できない」と表記した。

これはすでにnekoguruma氏もApeman氏らに指摘され知っているはずのことだ。たとえ「事実上の撤回」ではないとしても、証言の信用性を検証して報じたのは事実で、「放置」という表現は当てはまらない。


また、吉田証言が影響のあった証拠としてクマラスワミ報告書をあげ、下記のようにもツイートしている。

秦郁彦反論も収録されていることを指摘されると、下記のようにツイートした。

しかし文章量で比較しても、あくまで言及しただけの吉田証言よりも、わざわざ特筆するように指摘している秦郁彦取材を重視していると解釈すべきだろう。

むろんクマラスワミ報告書は複数の問題点が指摘されてきた。下記エントリで紹介した。否定的にであっても吉田証言をとりあげるべきではないというのも問題点のひとつ。

クマラスワミ報告書と吉田清治証言と性奴隷認定の関係をめぐるデマ - 法華狼の日記

しかしそうした批判をおこなった上で評価してきたひとりが吉見教授だ。前後した下記ツイートは不当な批判でしかない*2


後に、下記ツイートのようにnekoguruma氏は主張した。

上記は@氏の下記ツイートをリツイートしての主張だ。

kanenooto7248氏が紹介している@氏のツイートは下記のとおり。

しかし上述のように朝日新聞は1997年の時点で真偽を確認できないと報じており、20何年も放置していたというrinkoro0503氏の認識は誤り。疑問の声が1992年の秦郁彦調査のことだとすると、それ以前の1991年に金学順証言をつたえ、その後に複数の被害者証言や資料発見を報じることで、吉田証言が従軍慰安婦問題の主軸でないことを明らかにしていたともいえる。

また、一般論としてならkanenooto7248氏の主張はうなずけるところもある。しかし、1997年の段階で朝日新聞が事実上の撤回をおこなっていたことをつたえず、あたかも2014年にはじめて検証したかのような主張は、吉田証言の影響力を過大に見せる進行中のデマといえる。正しい歴史が認識されることを目指せばこそ、1997年に事実上の撤回をしていたことや、2014年の自社記事撤回が主要メディア初ということを、広くつたえるべきだろう。


ちなみに「嘘ついて30年以上放置」といえば、1965年の荒船清十郎議員の発言が、今にいたるまで政党として撤回*3されていないことが一部で知られている。

慰安所と慰安婦の数 慰安婦問題とアジア女性基金

 荒船清十郎氏の声明とは、彼が1965年11月20日に選挙区の集会(秩父郡市軍恩連盟招待会)で行った次のような発言のことです。

「戦争中朝鮮の人達もお前達は日本人になったのだからといって貯金をさせて1100億になったがこれが終戦でフイになってしまった。それを返してくれと言って来ていた。それから36年間統治している間に日本の役人が持って来た朝鮮の宝物を返してくれと言って来ている。徴用工に戦争中連れて来て成績がよいので兵隊にして使ったが、この人の中で57万6000人死んでいる。それから朝鮮の慰安婦が14万2000人死んでいる。日本の軍人がやり殺してしまったのだ。合計90万人も犠牲者になっているが何とか恩給でも出してくれと言ってきた。最初これらの賠償として50億ドルと言って来たが、だんだんまけさせて今では3億ドルにまけて手を打とうと言ってきた。」  

放置されて、すでに約半世紀。この発言には根拠となるものがなく、荒船放言として知られている。

14万2000人を総数とみなせば、歴史研究における推計数の妥当な範囲におさまっているわけだが、それをいえば済州島における慰安婦募集数はインドネシアにおける日本軍の直接的な慰安婦募集よりも少ない。

「末端の将校」が強制募集したスマラン事件と、吉田清治証言の済州島事件を比べてみる - 法華狼の日記

主体的に誤った主張をおこなった上、吉田証言以上の期間を「放置」されているとして、今度は自民党の責任を問う声が出てくるだろうか。

*1:数ツイート前にリツイートした、私のエントリを言及したしたnoharra氏のツイートに呼応したものらしい。https://twitter.com/noharra/status/532676364533383169

*2:さらに冒頭エントリで紹介したApeman氏とのやりとりと見比べれば、不誠実といわざるをえない。https://twitter.com/apesnotmonkeys/status/532526814506151936

*3:信用性に留保をつけることは撤回にあたらないというnekoguruma氏らの考えにあわせた。自民党の政治家が個人として否定していないと主張しているわけではない。

kanenooto7248kanenooto7248 2014/11/15 12:42 IDコールがあったので書かせてもらおうと思う。
問題にしているレイヤは「報道機関のモラル」である。
まず、事実上の撤回をしているからというのは「報道機関のモラル」全くなんの免罪にもなっていない。それが何らかの効力を発揮するというのならば、今回の謝罪と訂正などまったく必要ないではないか。
「あたかも2014年にはじめて検証したかのような主張は」
というのが問題なのではなく、1997の時点で、もうあの証言はダメだと理解していながら、公式な撤回に至るまでにかかった時間が問題を問題にしている。
吉田証言だけでなく、吉田調書の捏造あるいは誤報に関連付けてのその他一斉の謝罪であったところから、吉田調書の捏造が明るみに出なければ、もっと公式な訂正と謝罪は遅れていたであろう。
「正しい歴史が認識されることを目指せばこそ、1997年に事実上の撤回をしていたことや、2014年の自社記事撤回が主要メディア初ということを、広くつたえるべきだろう。」
というのはまあ、その視点で言えば筋は通っている。しかし、第四の権力と言われる報道機関のモラルという点から見ると、あまりにも甘いと言わざるをえない。「2014年の自社記事撤回が主要メディア初」というのも他のメディアが論外なだけである。
また、放置、というのは文字通り事実上の撤回として「疑問の声が上がって実際に真偽は確認できない」と報じてから、実際に公式に訂正、謝罪するまでの時間である。
さて、1965年の荒船清十郎議員の放言を訂正していないという話についても「それを訂正してない自民党が論外」なのであり、朝日新聞が比較対照されて免罪されるわけでもない。

MukkeMukke 2014/11/15 14:00 鐘さん,さすがにそれはありえないと思うわ。

>事実上の撤回をしているからというのは「報道機関のモラル」全くなんの免罪にもなっていない。それが何らかの効力を発揮するというのならば、今回の謝罪と訂正などまったく必要ないではないか
これ正気で言ってる? 日本語でニュースを見ていたのなら,歴史修正主義陣営の政治家やメディアがさんざん朝日へのネガティヴ・キャンペーンをやってきたのは知ってるでしょ。そういう状況の下で訂正・検証記事は書かれたわけ。朝日が事実上撤回しても,歴史修正主義者はそれを見て見ぬフリして朝日を攻撃してきたわけ。そういう状況を踏まえてその発言をするのならそれは単に歴史修正主義の尻馬に乗っているだけだとしか言いようがないと思うのだけれど。

>報道機関のモラルという点から見ると、あまりにも甘いと言わざるをえない
だったらなおさら,なんで朝日ばかりがそんなに突出して批判されるの? という話でしょうよ。もちろん僕はあなたが普段は色々なメディアを批判してきたことは知っているし,この件で朝日が色々と悪手を打ったことは事実だと思うのだけれど(池上氏の原稿を没にしたのはダメダメな対応としか言いようがないと思う),この件に関して言えば当時同じように吉田証言に乗っかっておきながら他の新聞社が碌に訂正記事も出していない,という状況(これが指摘されてるのはわかるよね?)で真っ先に訂正・検証記事を出した朝日を叩くことの何処に正義があるわけ?

>1965年の荒船清十郎議員の放言を訂正していないという話についても「それを訂正してない自民党が論外」なのであり、朝日新聞が比較対照されて免罪されるわけでもない
そこで法華狼さんが問うているのは荒船氏のモラルでも自民党のモラルでもないんだよ。朝日新聞の誤報を声高に糾弾しながら自民党の嘘には何も言わないひとたちのモラルだ。

(もちろん僕はリソース論を支持するから,基本的には「ある問題に声を上げていないこと」を責める気はないんだけど,でもこれは状況が違うよね。朝日新聞は単に間違っているからではなく「慰安婦問題における展開に重大な影響を与えた」という口実で責められているのだから,より重要な人物をスルーしているのははっきり言ってダブスタだよね)

メディアの倫理が重要でないはずがないけど,今回問われてるのは別の事柄だよね。たとえば朝日が積極的に重要証拠を捏造してありもしない犯罪をでっち上げた,というのであればこのくらいバッシングされても当然だとは思うけれど,吉田証言は吉田のペテンに引っかかったということでありまた大して重要な証拠でもなく従軍慰安婦が性奴隷だったことになんの変わりもない。ここで問われているのは歴史修正主義に基づいた報道機関への官民あげてのバッシングを許容するのかという,歴史修正主義と表現規制の問題なんだよ。後者の問題に強くコミットしてきたあなたであれば,それはわかってもらえると思うのだけれど。民間だけで事が済んでいるのならともかく,首相まで出てきているんだからね。

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