ある高校の生徒会組織「なかよし銀行」調査室。2学期早々の試験の結果が返されたようですが……今回のテーマは「自由競争」について、またもやドタバタで深い会話が始まるようですよ。
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プロローグ:夏休み明けの「部室」にて
借方シワケ(S) あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……。
貸方ケイリ(K) いったい何? 幽霊屋敷のお化けみたいな声を出さないでよ。
S うぅ……。ひどいよ、あんまりだよ……こんなのってないよ……。
K ああ、分かった。夏休み明けの抜き打ちテストで撃沈したのね。ちょっとは勉強すればいいのに、何も準備しないんだもの。……あんたって、ほんとバカ。
S 準備なら、したさ! ちゃんとヤマを張って、当たることに賭けたんだ! 奇跡も魔法もあるんだよ!
K なかったでしょうが……。
S こんなの絶対おかしいよ! テストで順位をつけて、競争させることに何の意味があるんだ! 学力試験が成績の格差を生むなら、みんな勉強するしかないじゃないか! あなたも……私もっ!
K いや、みんなが勉強するのはいいことでしょう。
S はぁ……。やっぱりケイリさんも競争至上主義者なんだね。ウォール街の論理に染まって、自由競争こそが最高、弱者は切り捨ててもかまわないという野蛮な思想に染まっているんだ……。
K ちょっと待って! あんた、1週間くらい前にネットゲームのランキング上位を獲得して浮かれていたわよね? 競争に勝てないやつはゲームから降りるべきだ、とか言って。
S 当たり前じゃないか。上位を取れないのは努力が足りないからだ。この世界は弱肉強食、勝たなければ意味がないよ。ゲームも、現実世界も。
K 言ってることがめちゃくちゃね……。
S だけど本当にどうしよう。この成績じゃ奨学金がもらえない。このままじゃ、食べ物も飲み物も買えずに干からびちゃうよ……。俺は勉強もバイトもしたくないのに!
K だったら、あんたはそこで乾いてゆきなさい。
S うぅ……。競い合うことに何の意味があるんだ……。
K まったくもう、付き合いきれないわ。
S 争いは何も生まないよ……。
K …………。
S ……本当は競争なんてないほうがいいんだ。……競争があるから政治も経済もおかしくなるんだ。
K 待ちなさい! 今、何て言ったの?
S へ? だから、競争があるから経済もおかしく……。
K 正直なところ、政治に競争が必要かどうかはあたしの手に余る議論だわ。だけど経済は別。聞き捨てならないわね。
S 経済とか会計とか……お金の話になると、ケイリさんは目の色が変わるね。
K 当然でしょ? だって、あたしはお金が大好きなの。
スチャ(ソロバンを構える)
K 経済にとって自由競争がどれほど大切か。そして、どんな場合には競争を制限すべきなのか……。いいわ、一緒に勉強してあげる。独りぼっちはさみしいものね!
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★登場人物紹介★
- ■貸方ケイリ(16歳 ♀)
- 生徒会組織「なかよし銀行」の調査室室長。365日24時間お金のことばかり考えている守銭奴JK。態度はデカいが背は小さい。イラスト参照。
- ■借方シワケ(15歳 ♂)
- なかよし銀行調査室で雑用係をやらされている。とある事件でケイリに莫大な借金をしてしまったため、頭が上がらないし、首も回らない。
※イラスト:倉澤もこ
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1. モノの価格はどう決まる?
K 自由競争がいかに大切かを説明するには、まず価格決定メカニズムについて知る必要があるわ。
S 価格決定メカニズム?
K モノの値段がどうやって決まるのか? って話よ。……ところでシワケ。あんたの好きな食べ物って何かしら? やっぱりお肉?
S 最近は肉よりも魚をよく食べるようにしているんだ。秋といえば、やっぱりサンマだよね!
K あら、意外。てっきりジャンクフードばかり食べていると思っていたわ。
S だってケイリさん、魚を食べると頭がよくなるんだよ?
K あんたが言うと信憑性が薄れるわね……。ところで、サンマの値段って毎年変わるわよね。これはなぜかしら?
S 漁獲量によって変わるんでしょ。豊漁のときは安くなるし、不漁のときは高くなる。当たり前じゃないか。
K 問題は、どうして生産量によって価格が変わるのかよ。不漁だと価格が高くなるのは、なぜ?
どうして不漁だと値上がりするの?
S ええっと、それは……。サンマ1尾あたりに必要なコストが高くなるからじゃないかな。
K ふうん……。もう少し説明してみて?
S たとえば船の燃料費や、網の修繕費、それに漁師さんの人件費とか、サンマの漁にもいろいろな費用がかかるだろ? 100万円かけて10万匹のサンマが獲れたら、1尾あたりのコストは10円だ。けど、1万匹しか獲れなかったら100円に跳ね上がる。
コストよりも安くは売れないから、漁獲量が減ると値段が上がるんだよ。
K つまり生産コストが価格に転嫁されていると言いたいのね。
たしかに昔は、そういう考え方の経済学者もいたらしいわ。供給側が価格決定を行っていて、需要側はそれを受け入れるしかない……と、考える人もいたようね。
S 今はいないの?
K ええ。この考え方では、たとえば値崩れを説明できないのよ。
生産量があまりにも多いと、製品の値段が極端に下がってしまう場合がある。それこそ、生産コストを回収できないほど安くなって、売れば売るほど赤字になる……なんて状況が起こりうる。これを値崩れと呼ぶわ。
価格調整のために野菜を畑に埋め戻すところを、ニュースで見たことがないかしら。
S そういえば見たことがあるような、ないような……。
K もしも供給側が価格決定を握っているとしたら、生産コストよりも安い価格でモノが取引されることはありえない。しかし現実には、ときどき値崩れが起きる。つまり、「供給側が価格決定者(プライス・メイカー)だ」という考え方は間違っているの。
S じゃあ、消費者――需要側が価格決定をしているの?
世界食料危機で考えるモノの価格
K 19世紀に入ると、そう考える経済学者が現れたわ。
たとえば小売店で働いていると、値下げせざるをえない場合がある。本当はもっと高い値段で売りたいのに、泣く泣くセールの札をつけることがあるでしょう。
小売業の現場に立つと、まるで消費者側が価格決定を握っているように感じるでしょうね。
S ああ、たしかに。俺もスーパーには閉店ぎりぎりに行くようにしているんだ。お弁当やお惣菜は、定価では高すぎて買えないもん。半額シールが貼られるまでサイフは開きたくないよ。
K スーパーの値引きを見ていると、モノの価格は「消費者が買える値段」まで下がるように思えるわね。
S 違うの?
K たとえば、あんたは2007年から2008年の世界食料危機を覚えているかしら。
S やだなあ、ケイリさん。そんな昔のことを覚えているわけないだろ。
K どんなに魚を食べてもあんたにはムダみたいね……。2007年から2008年にかけて、世界中で食料価格が高騰したわ。その結果、政情不安や経済不安、治安悪化が広がったの。
2006年の初めに比べて、2008年4月のトウモロコシの価格は125%、小麦は136%、コメに至っては217%も値上がりしたそうよ。
S 217%って、2倍以上ってことだよね。そんなに食べ物の値段が上がったら、ゲームに課金するお金がなくなっちゃうよ!
K 発展途上国ではゲームどころじゃない。食料価格は、生きるか死ぬかに直結するわ。暴動の起きた国があるのも無理ないわね。
S でも、どうして食料価格が高騰しちゃったんだろう。
K 理由の1つは、食用以外での穀物需要が増えたことだと言われているわ。たとえば、バイオエタノールとか。
S バイオエタノールって、トウモロコシから作る燃料だっけ?
K トウモロコシ以外にも、いろいろな穀物から作れるわ。たとえば麦を発酵させればビールに、コメを発酵させれば日本酒が作れるでしょう。そういうお酒を蒸留して、アルコールを濃縮したものをバイオエタノールと呼ぶの。
S あれ? 日本酒を蒸留すると米焼酎になるんじゃなかったっけ?
K ……なぜ未成年のあんたが焼酎の製法を知っているのか、ここでは追求しないでおいてあげる。あんたの言うとおりよ。焼酎やウォッカ、ウイスキーの製法は、バイオエタノールと大差ないわ。ようするにバイオエタノールを燃料にするのは、焼酎で自動車を走らせるようなものなのよ。当然、原料には大量の穀物が必要になる。
S 2008年ごろにはバイオエタノールがたくさん使われるようになったため、穀物の需要が増えた。その結果、価格が高騰した……ってことか。
K そういうこと。一般的には、需要が増すほどモノの値段は上がるわ。もしも消費者が価格決定を握っているとしたら、消費者の買える値段でしかモノは売買されないはずよ。けれど実際には、食べ物が高すぎて買えない状況が起きている。つまり、消費者も価格決定者(プライス・メイカー)ではないのよ。
マーシャルによる需要と供給
S モノの価格を決めているのが生産者でも消費者でもないとしたら、いったい誰が決めているのかな。
K その疑問に答えたのが、アルフレッド・マーシャルね。彼が1890年に出版した『経済学原論』という本では、それまでの議論を整理して、モノの価格は需要と供給のバランスで決まることを説明したの。
S 需要と供給のバランスかあ……。はて、どこかで聞いたような?
K うちの高校では経済学が必修科目でしょうが! 今あたしの話していることは、あんたも1学期のうちに習ったはずよ。
S あはは、何を言ってるんだよケイリさん。1学期に習った内容を覚えていたら、夏休み明けの試験で撃沈するはずないじゃん!
K 自慢げに話すことじゃないでしょう。しかたないわね。「需要曲線」と「供給曲線」の話から説明しましょうか。まず、これが「需要曲線」よ。
S 曲線? どう見ても直線だよ!
K 話を分かりやすくするために、わざとまっすぐに描いてるの。グラフの縦軸はモノの価格を、横軸は数量を表しているわ。
このグラフは消費者の「モノを欲しがる気持ち」を表現しているわ。ある品物を、ある価格のときに、どれだけの量を欲しがるのか。それを表現したのが需要曲線よ。
S うーむ。俺はこういう抽象的なグラフってニガテなんだよね……。
K それなら具体的に……そうね、サンマの価格と需要で考えてみましょう。
サンマの値段が高くなるほど、あんたの消費できるサンマは減る。サンマ以外のモノで空腹を満たそうとするはずよね。一方、サンマが安くなるほど、あんたはできるだけサンマを食べようとするはず。
S 消費者は、価格が安いほどたくさん欲しがり、高いとあまり欲しがらなくなる……ってことだよね。
K ええ。だから需要曲線は右肩下がりになるわ。
供給曲線は生産者の気持ち
K 今度は生産者のことを考えましょう。このグラフが「供給曲線」よ。
S 曲線? どう見ても――
K そのくだりはさっきやったわ。こちらのグラフは、生産者の「モノを売りたい気持ち」を表現しているの。消費者とは逆に、生産者は価格が高いときほどたくさん売りたくなるし、安いときはあまり売りたくないはずよね。
S そうかなあ? むしろ価格が下がったときは、たくさん売らないと売上を維持できないよね。だから価格が下がるほど、たくさん売りたくなるんじゃないの?
K このグラフは1種類の品物について考えているの。たとえばサンマの値段が下がっているときは、無理してサンマを獲ろうとするよりも、サバやアジを獲ったほうがトクかもしれないでしょう。
S サンマとサバって、獲り方に違いがあるの?
K サンマの場合、光に集まる習性を利用した棒受網漁法が主流ね。サバやアジの場合はまき網漁法が多いんじゃないかしら。
S ケイリさんは本当に何でも知っているなぁ。
K 何でもは知らないわよ。知っていることだけ。
S その学習意欲はどこから来るの?
K そうね、たとえるなら銅40グラム、亜鉛25グラム、ニッケル15グラム、負けず嫌い5グラムにお金への執着97キロで、あたしの学習意欲は錬成されているわ。
S ほとんど金銭欲じゃねーか!
需要と供給が均衡するとき
K ともかく、これで供給曲線と需要曲線が出揃ったわ。1学期に習った内容を少しは思い出してきたかしら?
S いいや、1ミリグラムも思い出せないよ。ぼくはキメ顔でそう言った。
K だから自慢げに話すことじゃないでしょう。
……今までの話をまとめるわよ。生産者と消費者のどちらも価格決定者(プライス・メイカー)ではなかった。どちらも、何らかの方法で決まった価格を受け入れるしかない存在――「プライス・テイカー」だと分かったわ。
このことから、マーシャルは供給曲線と需要曲線のぶつかり合うところで価格が決まるのではないかと考えたの。
K たくさんの生産者と消費者が取引に参加している状況では、モノの価格は需要と供給がちょうど釣り合う値段に落ち着くわ。この「ちょうど釣り合うところで落ち着く」ことを、経済学では「均衡する」と言うの。
ただし、供給曲線と需要曲線がどこで交わるかは、誰にもコントロールできない。どこが均衡点Eになるのかは、一種の自然現象みたいなものなのよ。だから生産者と消費者は、どちらもプライス・テイカーになってしまうわけ。
S EとかP’とかQ’とか、こういう記号もニガテだ……。
サンマの価格はどう決まる?
K 2012年の日本のサンマ漁獲量は約22万トンだったわ。サンマ1匹の重さが約150グラムだとすると、約15億匹ね。
S 日本人はものすごい量のサンマを食べているんだなあ。
K 一方で、2012年のサンマの店頭価格は1匹100円前後に落ち着いたらしいわ。さっきのグラフに当てはめれば、取引数量Q’は約15億匹、取引価格P’が約100円だったということになる。
K たくさんの消費者と生産者が取引に関わっていると、誰も価格決定を握れなくなるわ。国家や政府の干渉がなく、誰もがプライステイカーになってしまう。こういう状況のことを「自由競争」と呼ぶの。
S ケイリさんは、自由競争が経済にとって大切だと言っていたよね。
K ええ。自由競争は、消費者と生産者のどちらにとっても「おトク」なのよ。今からその理由を説明するわね。
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2. 自由競争がいちばんおトク?
K 簡単な問題を出しましょう。1個98円のりんごが1,000個売れたら、売上はいくらかしら?
S えー、計算問題かよー?
K そんなイヤそうな顔しないでよ、小学生レベルの問題でしょうが。
S なぞなぞなら得意なんだけどなぁ。たとえば9個のりんごを10人の子供に分けるにはどうすればいいでしょうか? ただし、りんごを切ってはいけません。
K 9個のりんごを、切らずに10人の子供に……? そうね、お金で解決すればいいのかしら。10人目の子供にはりんご代を渡して――
S ケイリさんは頭が固いなあ。ジュースにすればいいんだよ。
K そ、そんなの引っかけ問題じゃない! ずるいわ!
S いや、なぞなぞってそういうものだし。
生産者の収益はいくら?
K まったく、あんたと喋っていると話がちっとも進まないわね。……話を戻すわよ、1個98円のりんごが1,000個売れたときの売上高は?
S えーっと、98,000円になる……かな?
K 正解。今、あんたは「価格×取引数量=売上高」という計算をしたのよね。
S うん。だけどそれがどうかしたの?
K この計算を、さっきのグラフに当てはめれば――
K 水色で塗った長方形の面積が、「生産者の収益」ってことになるはずよ。
S 長方形の面積って、高さ×幅で求めるんだっけ?
K 小学生レベルのこと訊かないでよ。どうしてあんたがこの高校に入れたのか謎だわ……。
S 運も実力のうちって言うだろ?
限界費用と生産者余剰
K ところで何かを生産しようとすると、生産量が増えるほど費用も増えるわよね。たとえばサンマをたくさん獲りたければ、何度も船を出して漁に行かなくちゃいけない。そのぶん、必要な経費も増えていく。
S 商売の基本は原価計算! 何かを得ようとするなら、それと同等の代償が必要ってことだ。
K 生産量を増やすたびに増える費用のことを「限界費用」と呼ぶわ。数量が増えるほど金額がかさむということは……限界費用をグラフで表現すると、供給曲線によく似た形になりそうだと思わない?
S まあ、たしかに……。
K 厳密に理論の話をすれば、じつは限界費用のグラフと供給曲線は完全に一致するわ。けど、今は詳しい説明は省くわね。とにかく「モノを生産するたびに増える費用のグラフは、供給曲線によく似ていそうだ」とだけ理解してほしいの。すると――
K 供給曲線の下の、灰色に塗った部分の面積が、数量Q’を生産するのに必要な費用の総額になるわ。そして売上から費用を引くと、利益になる。
S つまり、残った水色の三角形の部分が、生産者の利益を表しているんだね。
K そういうこと。生産者の利益のことを、ここでは「生産者余剰」と呼ぶわ。
S なるほど。じゃあ、この生産者余剰の面積が大きくなればなるほど、経済的に「良い」ってことなのかな。
消費者にとって「おトク」なサンマ
K その話をする前に、消費者の利益についても考えてみましょう。たとえば……そうね、またサンマの供給量と価格でたとえようかしら。
S 2012年には約15億匹が供給されて、1匹約100円で取引された……って話だよね。
K ええ。ここでは15億匹のうち、約半分の7億匹目が消費された瞬間のことを考えてみましょう。
S 7億匹目のサンマが買われた瞬間ってこと?
K そうよ。7億匹目のサンマを買った人も、おそらく1匹100円前後の値段を支払ったはずよね。
S 価格が安定しているとしたら、そうなるね。
K これはあくまでも仮定の話だけど……もしも2012年にサンマが7億匹しか獲れなかったら、値段が高騰して200円になっていたかもしれないわ。
S そんな高いサンマ、俺は買わないよ。
K あんたが買わなくても、どうしてもサンマを食べたい誰かが買うはずよ。サンマ1匹に200円を出してもいいと思っている誰かがね。そういう人にとって、100円でサンマが買えるのは「おトク」じゃない?
S 思っていた値段の半額で買えるってことか。
K そういうこと。今の話をグラフで表現すると、こうなるわ。
K 需要曲線は、「消費者が払ってもいいと思っている金額と数量」を意味しているわ。したがって、需要曲線と取引価格の差は「思ったよりも安く買えておトクだった金額」を示しているの。
K サンマ1匹が約100円で取引されているという状況は、サンマに400円払ってもいいと考えている人にとっては300円のトクだし、150円を出してもいいと思っている人にとっては50円のトクよ。グラフのどこを取っても、需要曲線と取引価格の差が「消費者のトク」を意味している。つまり――
K この緑色の三角形の面積が、消費者の「おトク」の総額になるわ。これを「消費者余剰」と呼ぶ。
自由競争で「トク」は最大になる
S 消費者のトクした金額が「消費者余剰」かぁ……。生産者のトクした金額は「生産者余剰」だっけ?
K これら2つの余剰を足すと、社会全体がどれだけ「トク」をしたのかが分かるわね。
K 消費者余剰と生産者余剰を合計した面積は、自由競争をしているときに最大になるわ。だからあたしは、経済には自由競争が大切だと言ったのよ。
S うーん、よくわからないな。この三角形の面積が最大になるのは、本当に自由競争をしているときだけなの?
K 政府の規制や介入があったほうが、この面積が最大になるかもしれない……。そう言いたいわけ?
S このグラフって、すごく抽象的な概念を表現しているでしょ。机上の空論というか、現実世界では当てはまらない場合もあるんじゃないかな。
K 着眼点は悪くないわね。……それじゃ、逆に「この三角形の面積が最大にならない場合」を考えてみましょうか。そうすれば自由競争がなぜ大切なのかが分かるはず。さらに「政府が市場に介入すべき場合」も分かるはずよ。
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3. 市場の失敗
どういうときに政府が市場に介入すべきなのか? 後編は11/5(水)に掲載予定です!
著者:Rootport
ブログ『デマこい!』を運営している匿名ブロガー。1985年生まれ東京育ち京都在住……という設定だが、真偽のほどは分からない。ネットでは誰が言ったかよりも何を言ったかのほうが大切! を信念に匿名主義(?)を標榜している。大して飲めないくせに左党でスコッチ好き。たい焼きは頭から食べる派。
「なかよし銀行・調査室」のストーリーは、ブログにも「知識ゼロから学ぶ簿記のきほん」シリーズとして掲載している。