子育て支援を行う公共施設の一角に、どーんと貼られていたポスターです。
かわいい赤ちゃんですね。ちょっと僕の小さい頃に似てるかも、とアホみたいに思ったり、、、
これ、よーーーーく見てください。
多分、よーく見ても、何が問題なのか分からないかもしれませんが、、、
これ、すごい問題があると思うのです。
主唱:厚生労働省・内閣府、となっています。
やっぱ、厚生労働省じゃ、こういう問題、ダメなんだ、と痛感させられました。
児童虐待の問題、子育て支援の問題は、厚生労働省が担当しちゃいけないんです。
何も分かってない…。
ドイツでは、こういう問題は、厚生労働省じゃない官庁が管轄しています。「家族・高齢者・婦人・青少年省」という省庁があって、そこが管轄しています。日本の厚生労働省にあたるのは、「労働・社会省」になっています。
考えてみてください。厚生(=福利厚生)と労働の官庁ですからね。失業問題や年金問題はここでいいんでしょうけど、家庭の問題、子育ての問題、虐待の問題は、どう考えても、厚生労働省の管轄じゃないはずなんです。
厚生労働省の発想ですから、どうしても、家庭からの目線ではなく、企業目線になります。あるいは、お上目線。
このポスターで訴えているのは、「虐待を見つけたら、すぐに通報してね」、ということ。つまり、虐待するほどに追いつめられている母親目線ではなくて、その追いつめられた母親の住む住居の近隣の人々に呼びかけているんです。
完全に、母親・父親は、「悪者扱い」。悪人である前提で、これは書かれています。
これ、いったい、誰に呼び掛けているんでしょうかね?
「緊急の相談に真摯に応じます」、というような一言がない。「困っていませんか」という呼びかけもない。ポスターの一番下に、小さく「児童相談所や市町村の相談窓口では、子育てに関する相談はなんでも受け付けています。出産や子育てで気になることがあったら、相談窓口にご連絡ください」、と書いてあるだけ。こんな適当で、愛のない言葉を見て、誰が相談すると思いますか? むしろ、相談しないでね、というメッセージにさえ見えてきます。本来であれば、この文字が一番中央に来るべきです。しかも、「なんでも受け付けています」、という言葉に、何とも言えない「投げやり感」を感じます。
「なんでも」って何ですか? 「気になることがあったら」って何ですか?
虐待する親の気持ちを考えて、このポスターを作っていますか? 虐待している親がこのポスターを見たら、どう思うと思いますか? それこそ、「社会的想像力」をもって、このポスターを眺めてみてほしいです。
それとは対照的に、大きな文字で、ポスター中央に、「あなたの一本のお電話で救われる子どもがいます」、と書いてあります。
ええ。確かに、虐待からは救われるでしょうね。そして、保護されて、児童福祉施設等に連れていかれて。つまりは、親と引き離されて生活することになります。日本は、里親制度が充実してませんから、ほぼ施設行きになります。里親の種類はいっぱいありますけどね…(嫌味です)。
親から引き離されて、喜ぶ子どもがいますか? 現実を見てますか? どんなに酷い虐待を受けても、子どもはそれでも母親・父親を求めるものです。一番救わなければいけないのは、虐待する親であり、「加害者」と想定されている「弱者」です。最も弱い存在であり、最も愛おしい存在である赤ちゃん・子どもに手をあげなければならないくらいに、追いつめられている親たちです。
そういう視点が、このポスターにはまったくない。愛情の欠片もない。
子どもたちが望むのは、虐待する親から引き離してもらうことではなく、親が虐待しないような人間になってくれることです。それ以外にはありません。昔のように、笑顔で自分に接してくれる「やさしいお母さん」、「やさしいお父さん」に戻ってくれることです。
本当に子どもを殴ったり、蹴ったり、罵倒したり、ネグレクトしたりすることを心からの喜びと感じている親がいたとしたら、その人は虐待する親ではなく、マゾヒストであり、常軌を逸しています。でも、そんな「変質的な親」は、そうそういるものではありません。みんな、したくてしているわけじゃないんです。なんで、そんなことも分からないんだ、、、?
さらに極めつけはこちら。
相談じゃなくて、連絡は匿名で行えるんですって。
ドイツの匿名支援を研究している身としては、もうびっくり仰天です。(ま、分かっている話ではありますが)
連絡=通報は匿名で行える、と。
でも、相談のところには、匿名と書いてない。
そう、これが、日本の現実。
あくまでも、通報に頼っているのが、この国の虐待対策。
母親(父親)の匿名での相談・支援なんて、最初から考えていないんです。
分かってもらえますかね?!
日本のこの虐待防止ポスターは、完全に、訴える対象を間違えています。
最も訴えかけなければいけない相手は、通報してくれる人ではなくて、虐待してしまって苦しんでいる親たちであるはずです。
最後に、ドイツやオーストリアのポスターを見てください。
妊婦さんへの呼びかけですが、目線が、親目線です。
「私たちは匿名で確実にあなたを助けます」、と書いてあります。
なんで、日本の厚生労働省は、こう、書けない?!
書けないとしたら、なぜ?!
さらに、もう一枚。
「あなたは望まない妊婦ですか?」、と書いてあります。
こちらも、目線はお母さんです。お母さんへの呼びかけになっています。
虐待のポスターも同じです。
「あなたは苦しんでいませんか? 匿名で相談に応じます」、と堂々と書きます。
なぜ、そんな愛のある言葉を、この国の行政は書けないのか?!
だから、この国の福祉は、いつまでたっても、当事者目線にならないんだ、と思っています。
根本的に、「やってやってる」、という目線なんですよね。お上目線。あるいは、国鉄目線(汗)。
行政と市民がパートナー関係、友愛関係になっていない。
とりあえず世の中が「虐待!虐待!」と騒いでいるから、作ってみましたっていう感じがまるだし。やっつけ仕事丸出し。
このポスターを作るのに、いったいどれだけお金を使っているんでしょうね?!
もちろん税金です。
「こういうのを作っておけばいいでしょ?!」的な気持ちで作っていたとしたら、、、
僕はもう、今の政治には1%も期待していません(あえて言えば、、、)。
だから、官庁にはしっかりしてもらわないと、と思います。本当はもっと政治家のみなさんが、頑張ってもらわないといけないはずなのですけど。
少しでも、「このポスター、変だな?!」、と思っていただけたら幸いです。
PS
このポスターに出てくる赤ちゃんは、何にも悪くないです。ただ、内容が酷すぎます。
私の視野を広げる役にはたってくれました
僕も、すごく考えさせられました。一見、なんてことなかったんですけれど、読んでみたら、え?!って。僕は、日本の女性が(変な意味ではなく!)好きですし、日本の女性を大切にしないこの国の行政には、怒りを感じるのであります。
匿名希望さん
コメントありがとうございます。そうだと思います。色んな問題が積み重なった結果として、虐待や遺棄や殺害が起こります。単純に、過度な贅沢はよいので、日本で暮らすみんながそこそこの生活ができることを望みます。悲しい人の多い国にはしてはいけない、とも思います。