米食品医薬品局(FDA)が承認した医療機器のうち、患者に及ぼすリスクが中等度から高度の機器の大半について、その安全性や有効性を証明する科学的証拠がほとんど公開されていないことが29日に発表された調査結果で明らかになった。こうした科学的データの公開は法律によって義務づけられている。
この調査を行った研究者は米専門誌「JAMAインターナル・メディスン」に、この5年間でFDAが承認した医療機器から抽出した50種類のうちの42種類で、そうした科学的証拠が欠けていたと報告した。1990年の法律が、FDAの承認を受けるために十分なデータを提示することを義務づけているにもかかわらずだ。こうしたデータには実際の患者を対象にした臨床試験が含まれる場合もある。
調査論文の執筆者で、公衆衛生に関するシンクタンク全米医療サービス研究センターの所長を務めるダイアナ・ザッカーマン氏は「素晴らしい試験が行われていても、その証拠がなく、一般に公開されることもない」とし、「FDAの幹部が透明性について強調するなかで、これほど情報が欠けているのは衝撃的だ」と述べた。
この調査論文を執筆した同センターの研究者たちは、法律の運用強化を求めた。
FDAはこの調査結果に対し、「(FDAは)一般公開されている情報をはるかに上回る大量のデータを精査している」と反論。FDAの承認方法は「安全性を確認するための確固たる根拠の必要性と、新しい技術を迅速に(市場に)もたらすことの間で釣り合いをとることで、一般の人々の役に立ってきた」と主張した。
問題なのは、年間で約400種類の埋め込み医療機器――大半が中等度から高度のリスクを持つ――に販売承認を与えているFDAの510(K)という「市販前届出」の制度だ。
この制度で、企業は申請する医療機器についてヒトを対象とした臨床試験を実施する必要がない。ほとんどの医療機器は、既に承認・市販されている類似製品とほぼ同等であることを示すだけでFDAの承認が取得できる。つまり、その既存製品の安全性・有効性が証明されているのであれば、新しい製品についてもそれらが証明されるはずという考えだ。
しかし1990年の「医療機器安全法」は、新製品がなぜ既存品と同等かを証明するデータを企業が一般に開示するよう義務づけている。そうしたデータには臨床試験の結果も含まれるが、それを含めることは必須ではない。
米国科学アカデミーの研究部門である医学研究所(IOM)は2011年、報告書で「同等性に依存することは、これから市販される医療機器の安全性・有効性を保証するものではない」と訴え、この種のFDA承認制度の見直しを求めた。
JAMAインターナル・メディスンの編集長で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部教授のリタ・レッドバーグ氏は「こうした機器の多くは患者へのリスクが高いものであり、まったく試験を実施することなく市販されている」とし、「試験結果があっても一般公開されていない」と述べた。
レッドバーグ氏は、オバマ政権のもとFDAの主導で安全性確保の水準が高まったという証拠はないと話す。