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留学生倍増計画、7年連続前年割れ 文科省が改善本腰

産経新聞 9月14日(日)7時55分配信

 ■予算20億円増、6年後12万人に

 海外に行く日本人留学生が減り続けている。3月末に公表された平成23年の日本人留学生数は約5万7500人で7年連続で前年を下回った。内需の底打ちや人口減で企業の海外進出は避けられず、グローバルな人材育成は必要不可欠な状況だ。文部科学省は6年後に留学生を倍増するための計画を立て、今夏から本格的に始動している。(西尾美穂子)

 ◆夢と現実の間で

 東京都の会社員、山中沙恵香(さえか)さん(23)は筑波大に在学中だった昨年2月、地中海のマルタ共和国の語学学校に3週間だけ行った。内定をとってから卒業までの1カ月間に夢を実現した形で、「あまりにも短すぎて旅行という感じだった」と振り返る。

 今も「もしちゃんとした留学をしていたら、希望通りに就職できなかった」と考えることがあるという。

 「就職希望だったら、留学しなかった」。茨城県つくば市に住む同大修士課程の小田切真梨さん(25)は昨年12月までの3カ月間、フランスに留学した。周囲には就職活動に専念する学生もいたが、小田切さんは研究者志望。だが、「たった3カ月間でも、日本にいるのといないのでは、就活で大きな差がつく」と実感したという。

 ◆続く“負の連鎖”

 「日本の若者は、海外より国内での安定した生活を選ぶ『内向き志向』だといわれてきたが、潜在的には一概には言えない」

 留学事情に詳しい東大の村上壽枝・特任専門職員(45)はそう話す。留学にあこがれても、就職を考えてためらう学生は多い。村上氏は「時期を逃すと就職が難しくなるという通念が、挑戦意欲を後退させている。内向きにならざるを得ない」と説明した。

 留学が就職の足かせと考える学生は多い。平成19年に文科省が国立大87校に学生が留学を躊躇(ちゅうちょ)する理由について聞いたアンケートでは「帰国後、留年する可能性が大きい」という回答が59件で最多だった。留学後に就職できず、留年する先輩を見た現役学生が夢をあきらめる“負の連鎖”が続いている。

 世界では、国の発展のために他国との関係を強化して成長を取り込もうとする動きが盛んだ。留学生の獲得競争が激化し、留学生の派遣数も伸びている。

 ◆「目標達成困難」

 出遅れ感の強い日本は、26年度の留学に関する予算を前年度比20億円増の355億円に。東京五輪のある6年後に学生の留学生数を現状の約6万人から12万人に倍増させる目標を立てた。留学を生かしたキャリアプランが描けるように、今年7〜8月には留学予定の学生約280人を対象にした事前研修を開催。複数の企業に留学生に求める人物像などの説明を受けた学生が順次海外に飛び立っている。

 ただ、文科省幹部は留学生数について「数年後に増加に転ずるかもしれないが、現状のままでは目標の達成は難しい」と明かす。対策の鍵について、村上氏は「『留学が就職に不利』という意識を変える要素が必要」と指摘する。

 留学生向けの就職情報サイト「リクナビ」を運営する「リクルートキャリア」の担当者は「留学経験は資格と同じで、持っているだけでは意味がない。その人次第で有利になる」と説明。企業は人柄や今後の可能性を重視して採用を決める傾向があるため、留学の理由や経験について説明できることが大事という。村上氏は「社会で活躍している留学経験者の例を広く示して、潜在的な留学意欲を引き出すことも必要だ」と話している。

最終更新:9月14日(日)13時56分

産経新聞

 

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