スコットランド情勢が緊迫してきました。この問題は、ベルギーや沖縄にも影響を与えます。21世紀は再び「ナショナリズムの世紀」となるかもしれません。
拙著『宗教改革の物語─近代、民族、国家の起源─』(角川書店、2014年4月刊)は、まさにこのような事態を想定して書きました。ただし、私が考えていたよりも事態の進捗が早いです。
分析メモ No.98「スコットランドの独立に関する住民投票」
【事実関係】
9月18日、スコットランドで連合王国(英国)からの独立の是非を問う住民投票が行われる。
【コメント】
1.―(1)
英国の正式名称は「グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)」で、略称はUKになる。日本外務省では、外交行事のときは「連合王国」という略称を用いる。
英国の国名には、民族を意味する言葉がひとつも入っていない。大ブリテン島(グレート・ブリテン)の主要民族は、イングランド人、ウエールズ人、スコットランド人だが、グレート・ブリテン人という民族はいない。また、アイルランド人という民族はいるが、北部アイルランド人という独自民族は存在しない。
国家に民族を意味する名称が入っていないのは、バチカン市国と英国だけだ。その意味で、英国は近代的な国民国家とは異なった原理で構築されている国家である。女王(王)に対する忠誠を軸に、いくつかの地域が連合して国家を形成している。
1.―(2)
上記の事情があるので、イギリスの行政は地方に分散し、政党・国会議員が国家的規模での課題に取り組むという分業がなされている。(略)
2.―(1)
しかし、スコットランドでは、従来の英国型政治が機能しなくなっている。2011年5月5日に行われたスコットランド議会選挙では、スコットランド国民党が第一党になった。国民党が過半数の議席を獲得したのは初めてのことだ。(略)
3.―(1)
国民党は、2014年にスコットランドが英国に留まるべきか、独立するかについての住民投票を行うことを公約にした。それを受けて、9月18日に独立の是非に関する住民投票が行われる。
英国の中央政府もこの動きに神経を尖らせている。6月4日、ロンドン発のロイター通信が次のように伝えた。
<9月18日に実施されるスコットランド独立の是非を問う住民投票に向け、英政府は、レゴを使ったユーモアで英国残留を住民に呼びかける新たなキャンペーンを開始した。
政府の公式ウェブサイト(r.reuters.com/reh89v)などによると、英国に残留した場合、独立するよりも年間1400ポンド(約24万円)程度の経済的な恩恵が得られるとし、その使い道の提案12例をレゴブロックで表現している。
1つ目の提案は、海外のビーチで過ごす10日間のホリデー。1400ポンドで10日間の海外旅行に2人行け、日焼けクリームも買えるとし、レゴでビキニ姿の女性がビーチに横たわり、日焼けしている様子を表現している。
ほかにも、エディンバラとグラスゴーをバスで127回往来できたり、エジンバラフェスティバルでホットドッグを280個食べられたりできるとユーモアで残留を呼びかけている。
だが、スコットランドの住民すべてがこうした提案をユーモアと捉えているわけではない。ある女性はツイッターで「よくも私たちをばか者扱いできるものだ。(独立に)反対する人がいるなんて全く理解できない」と語っている。>・・・・・(以下略)
佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol044(2014年9月10日配信)より
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