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この夏に読んで最高に面白かったミステリー小説10選

今年の夏はお盆休みを利用して、ひたすらミステリー小説を読んでいました。その中でも特に面白かった小説を10冊紹介します。
いったい何を読めばいいのかわからない人へ、買って損しない、読んで満足できる作品を自信を持っておすすめします。


獄門島 (角川文庫)

獄門島 (角川文庫)

相次ぐ殺人事件において、犠牲者の亡骸は常に奇怪な装飾を施されて登場します。
その装飾に何の意図があるのかという謎、意表をつく犯人の設定、そして獄門島という特殊な環境と、終戦直後という時代背景でしか成立しない犯行動機。全てが斬新であり、しかもそれらは互いに有機的に結びついているのみならず、あまりに皮肉な運命の悪戯にも彩られ、精密機械めいた美しささえ感じさせます。著者の本格ミステリー作家としての才能と物語作家としての資質の完璧な融合から生まれた奇蹟のような作品です。




バラバラにされた娘たちの遺体はなぜ日本各地に埋められたのか。犯人たる可能性のある関係者は全員死亡しているのに、誰が犯行を成しえたのか。御手洗の推理の過程はスリリングで、めくるめく論理の興奮に満ちています。




ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ (下) (角川文庫)

ドグラ・マグラ (下) (角川文庫)

夢野久作の代表作です。記憶を失ったまま自分自身の犯行と、自分にそう仕向けた犯人の双方を追求しなければならないという探偵小説的趣向から始まるのですが、それはほんの発端の発端に過ぎず、読み進めればさらなる謎が生じてきます。
人間が行き場のない閉鎖的な状況に追い詰められたときの恐怖と絶望が、幾重にも現実と虚構のレベルが錯綜する物語空間を使って表現され、覚醒しながら悪夢を見せられているかの如き読書体験を味わることができます。




火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

カード破産という社会問題にスポットを当てた本書では、過去を消し去るために犯罪に手を染めるヒロインの印象が強烈です。なかなか姿を現さないヒロインに焦れ、読者は本間とともに彼女のことをあれこれと想像し、懸命に追い求めることになるでしょう。





本書のメイントリックは大胆なものですが、はっきりと記された「心理の足跡」は論理上での必然が存在します。その鮮やかさが心に忘れられぬ印象を残してくれます。





人形はなぜ殺される 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)

人形はなぜ殺される 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)

次々に殺される人形や黒魔術などの演出を通じて、本書には強い怪奇色が宿っています。そこに巧妙なトリックや多くの伏線を重ねることで、極めてクオリティの高い推理譚になり得ているのです
謎の魅力だけでなく、、抑揚のあるプロット、とりわけクライマックスの急展開も見所です。





グリコ・森永事件を材にとったと思われる本作は、劇場型犯罪に巻き込まれながら、権力闘争もあって一枚岩になれない大企業、その周りにうごめく政治家、総会屋、仕手筋、警察、マスコミなど、様々な立場の思惑と運命が交差するさまを濃密に描いた一大巨編です。
説明のつかない人間の感情と、合理性にもとづいて動く巨大組織の対立構図は、個人と社会の相克そのもの。事件の背景としてあぶりだされる日本社会の様相もまた矛盾に満ちています。




本書の見どころはいくつもありますが、やはり最大のポイントは「11枚のとらんぷ」の利用法でしょう。オリジナルのトリックを使った掌編はそれぞれに秀逸ですが、ここには巧妙な伏線が隠されており、それらを通じて殺人犯の正体が判明します。
単なる情報や技術だけでなく、奇術師の心構えや美学が随所に記されているのも興味深いです。まさしく、奇術師でもある著者にしか書き得ない贅沢な作りとなっています。




斜め屋敷の犯罪 改訂完全版 (講談社ノベルス)

斜め屋敷の犯罪 改訂完全版 (講談社ノベルス)

本書はトリックだけの物語ではありません。結末を知ってから再読すれば、随所に撒かれた伏線がはっきりと見えてきます。とりわけある「固有名詞」と「殺人シーン」の描写はすこぶる鮮やかです。




匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

ドグラ・マグラ」「黒死館殺人事件」「虚無への供物」の三大寄書に連なる四番目の奇書として名高い一冊です。作中にちりばめられた遠隔殺人や死体隠蔽トリック、心理学や物理学を応用した奇天烈な推理、なによりも本作を貫く壮大な仕掛けに心を捕えられました。