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iPS世界初の移植、目の難病患者に 理研と先端医療財団

2014/9/12 23:57
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 理化学研究所と先端医療振興財団(神戸市)は12日、世界で初めてiPS細胞を使った患者への移植を実施した。目の難病患者を対象に、患者の皮膚からiPS細胞を作って網膜細胞に育て移植した。治療に向けた安全性を確認する臨床研究で、手術は無事に終わった。京都大学の山中伸弥教授が人のiPS細胞を作製してから7年で、医療応用に踏み出した。

 生きた細胞を使って傷ついた臓器や病気を治す「再生医療」は新しい治療法として実施例が出始めている。万能細胞を使った再生医療では欧米を中心に胚性幹細胞(ES細胞)が先行して研究が進められてきた。ところがES細胞は受精卵から作製するため、生命を壊す恐れがあるとして、倫理面などが普及に向けたハードルになっていた。

 iPS細胞は患者自身の細胞を使えるため、こうした問題が避けられるとの期待が大きい。特に日本は基本特許を持つため欧米に比べて産業化には有利で、政府も大規模な研究支援や法整備を進め、新産業に育成するよう後押ししている。

 手術は先端医療振興財団先端医療センター病院(神戸市)で実施した。iPS細胞の作製は理研の高橋政代プロジェクトリーダーが手がけ、手術は同病院の栗本康夫眼科統括部長が執刀した。

 手術を受けたのは、加齢で症状が進行する「加齢黄斑変性」という病気で悩む兵庫県在住の70代女性。目の奥にある網膜の近くに血管が入り込み周囲の細胞が圧迫されて、見える物がゆがんだりする。症状が進むと失明の恐れもある。

 手術は12日午後2時20分に始まった。患者のiPS細胞からあらかじめ作った縦1.3ミリメートル横3ミリメートルのシート状の網膜細胞を目の奥に移植した。手術は午後4時20分に終わった。

 同病院によると、手術では多量の出血などは認められず容体は安定しているという。患者は手術後7日程度入院を続けた後、定期的に検診を受けて予後を観察する。

 移植の目的について、同病院の平田結喜緒病院長は「(iPS細胞の)安全性を確認するのが主目的」と説明した。移植した細胞ががん化しないかなど検証することを最重点に位置づけた。栗本部長は「1年経過してがん化しなければ成功だ」と話した。

 視力の大幅な改善は見込めないとみられ、改善するとしても移植から1~2年経過しないと判断できそうにないとしている。視力にかかわる視細胞の多くが死滅しているためだ。ただ症状の進行が止まったり、ほかの治療による負担が軽くなったりする効果は期待できるという。

 同病院は2人目以降の患者については未定としている。再生医療の関連法が11月から施行し、臨床研究の申請を改めて出し直す必要があるためと説明している。実施する場合には、既存の治療法が効かず矯正視力が0.3未満の患者が対象となる見込みだ。

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山中伸弥、再生医療、iPS細胞、理化学研究所、ES細胞

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