ボン兄タイムス

社会、文化、若者論といった論評のブログ

マイルドヤンキーのレジャーがジジババ臭くなっている件

 Facebookmixiでマイルドヤンキー化した神奈川県西の友人知人の投稿を見ているととても気になるところがある。

 なんかやたらセンスがジジババ臭いのである。

 これは相当深刻な問題だと思う。

 

①シブい場所をやたら旅行している

 普通、若者と言えば街中で遊ぶのが普通である。ましてやチャラい柄なら、なおさら都心の垢ぬけたスポットやイベントが好みかもしれない。旅行といえば大規模フェスとか浜辺のリゾート的なアッパーな場所に行くのが普通だろう。

 

 ところが、県西マイルドヤンキーは違う。やたら地方都市に観光に行っているのだ。

 箱根、伊豆などの近場はもちろん、関西のどこかの地方観光地みたいなそんな場所に行っても何も面白いもんもなくね?というマニアック場所もやたら多い。そして、景勝地や温泉なりのいかにも老人が集合写真を撮っていそうな場所からFacebookmixiを投稿しているのだ。

 シブすぎる。クラブツーリズムや大人の休日クラブの老人と何も変わらない。サザエさんのオープニングのマネでもしているつもりなのだろうか。

 だが、彼ら彼女らの着ているファッションは相も変わらずチャラチャラしたマイルドヤンキーなのである。余計にシュールすぎるのだ。

 

 修学旅行の時に神社仏閣なんてつまらなくてまともに見ず、自由行動でマクドナルドで飯を食ってゲーセンで遊んでいるのがマイルドヤンキーの学生時代だったはずだ。そのくらいに「コテコテな国内旅行文化」と相いれなかった連中が、なぜこんなふうに豹変してしまうのか、そのきっかけはなんなのか。とても不思議である。

 私なら関西のどこかの景勝地にいくカネと時間があれば、台北サイパンにでも行くのだけど。

 

 

思い出のメロディーを歌うためにやたらとカラオケに行っている

 今も昔も、老人会の定番と言えばカラオケである。

 老人たちはみな、カラオケボックスに出向き、若い頃に流行った歌謡曲や軍歌などの思い出のメロディーを歌うものだ。

 

 マイルドヤンキーたちもまたカラオケにやたら行っているのだ。

 歌っている歌はさすがに演歌ではないが、オレンジレンジモーニング娘。バンプオブチキンなどの「思い出のメロディー」である。今の中学生なら「誰?」と思うような歌手だけを歌っているようなのである。

 そこには「今」がないのだ。今に生きていないのである。まだ20代前半だというのに、半世紀後のなれの果てが想像に難くないから怖いものである。

 

 ちなみに老人が洋楽に疎いように、このマイルドヤンキーたちも洋楽と言う概念が1ミリもないようで、たぶんイギー・アザリアも知らなければカントリー歌手のテイラー・スウィフトすらわからないことだろう。オレンジレンジとかの時代に流行った洋楽(たとえばエミネムなど)すら頭の中からすっぽ抜けている可能性もある。

 

 老人が地域の同級生上がりの老人会でカラオケに行くように、マイルドヤンキーも元中や高校時代の同級生としかつるんでいない。世代の違う職場の同僚とは挨拶程度の関係すら持っていなさそうだ。そういう閉鎖性もなんか老人くさいのが彼らだ。

 

③外食はもっぱら和食志向

 高齢者が好む食事と言えば和食である。

 なぜなら彼らが若い頃は鬼畜米英の文化は禁じられており、敗戦のコンプレックスから戦後も毛嫌いされていたところがある。マクドナルドが日本に登場したのは1970年代のことだが、当時はまだ健在だったろう大正生まれ世代もほとんどが死ぬまでハンバーガーを食すことはなかったはずだ。

 

 マイルドヤンキーたちもなぜか和食志向なのだ。

 彼らにとって肉料理といえばハンバーガーではなく、和風焼肉か牛丼なのである。

 焼肉と言えば韓国っぽいイメージもあるが、韓国式焼き肉店と日本の焼き肉はかなり異なる。韓国では豚ばら肉などをハサミでちょきちょき切ってから焼き、えごまの葉っぱでくるんで食べるが、日本ではそういう焼き肉はメチャ―ではない。(そんな事情から牛角の海外店舗では「日本式焼き肉」とわざわざ看板に書いてあり、韓国料理と違うことをアピールしている)

 マイルドヤンキーは、新大久保にあるような本場っぽい韓国焼き肉店は店舗にはまず行かない。和風焼き肉店の中でもとりわけ地域に根差したローカル店舗に行きたがる癖がある。

 

 たまにステーキチェーンに行ったとして、本場発祥の外資系ファミレスのアウトバックでもシズラーでもTGIフライデーズでもない。ましてや最近六本木に1号店のできたニューヨークでおなじみのウルフギャングやBLTでもない。

 ステーキハウス「けん」である。

 いかにも和風の店名で、日本式カレーライスを提供している、あの箸で肉をつかんだほうがしっくりきそうな「けん」なのだ。シズラーの方式を徹底的に日本化してリーズナブルにした、あの「けん」にしか行かないのだ。それでも肉を食わないし食えない高齢者よりはマシかもしれない。

 

 ほかにもマイルドヤンキーたちに人気の和食といえば、牛丼か居酒屋もある。ブラック経営でおなじみのすき家ワタミはマイルドヤンキーたちに支えられている。メニューは伝統的な和食ではなくても和風なものばかりで、あか抜けたものは一切ない。

 日常的な外食体験なら回転寿司も欠かせない。スシロー、くら寿司かっぱ寿司のいずれかである。カップルが記念日にくら寿司にデートに行って店内でピース写メを撮ってるのである。びっくらぽんは一生の思い出になることだろう。あと忘れてはならないのは「作務衣系のラーメン屋」。これも典型的な和風の食文化である。

 そのくせ、和風チェーンが大好きな癖に業界の代表格である「大戸屋」は敷居が高く感じるらしいのが彼ら彼女らの不思議な所であり、でも夢庵ならギリギリ行けるらしい。

 

 とはいえ「パンケーキが流行っているから」とわざわざ原宿まで登って何時間も並んで食べに行くことを1度くらいはするのがマイルドヤンキーの特徴でもある。友だちとのネタにするために1度行っても、2度目はない。ご老人がゴールデンウイークに久々に会った孫と一緒にマクドナルドに食事に行くような無理のある背伸びだからだと思う。

 

④着てる服が「しまむら」で、履いてる靴が「東京靴流通センター

  ファッションセンターしまむらという埼玉の服屋がある。神奈川県では県西地域に早くから進出していて、系列の「アベイル」をふくめて店舗がいくつもある。数年前からやっと県東にも進出するようになった。

 県西マイルドヤンキーたちは、しまむら着用率がやたら高い。行けばわかるのだが、「しまむら」は県道沿いとかにあるような昔ながらのディスカウント服屋を全国チェーンにしたような店である。真新しい店舗ですら昔の雰囲気を醸し出しているのが趣深いものだ。

 昔ながらのディスカウント服屋だけあり、客層の大半は老人なのだが、そこでわざわざ若者風の服を選ぶのがマイルドヤンキーである。私も何度かしまむらには入店したことがあるが、男性物は特に老人の着る服以外は尽く「調子こいた中学生が着てそうな服」ばかりであった。

 高齢者は「しまむら」で服を買い、「東京靴流通センター」でシューズを調達するものだが、マイルドヤンキーもまさに同じなのである。彼らにしてみればユニクロは高次元な選択肢で、外資ファストファッションのGAPやZARAやTOPMAN(TOPSHOP)すら縁遠いようだ。限りなくしまむらくさいロスやオールドネイビーがもっと普及すればいいと思う。でもドン・キホーテには行けるんだよね。

 たまに恋人や仲間と町田のアウトレットまで車を出しているらしいのだが、その割には服装に変化は見られない。多分見てるだけで何も買ってなかったんだと思う。

  つまり、マイルドヤンキーの象徴ともいえるあの奇抜な服装は、彼ら彼女らがそういった店舗にばかり行き、限られた商品ラインナップから見た目ロコツに老人臭くないものだけを選ぼうとした結果、無意識的に染まったものだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 考えてほしいのだが、ロック大好き内田裕也は70代である。エルビスの大ファン小泉元総理だって70代。

 マイルドヤンキーの老人化って「本物の老人以上に老いている」ようにすら思えてしまう。これは怖いことだ。

 外資系の外食が盛んになり。リゾート施設やレジャースポット、フェスやクラブや若者っぽいイベントが華やいだのは1970年代後半以降のことで、こういう文化を担っていた世代がいずれは高齢化することになる。

 女性雑誌のアンアンやノンノの創刊号は外タレモデルを起用し、日本離れした欧米の若者文化を徹底的に取り入れていた。「アンノン族」と呼ばれた彼女らは、当時の国鉄が地方観光を活性化させるために打って出たキャンペーンの「ディスカバージャパン」の訴求対象でもあった。この人たちが団塊世代であり、今孫のいる世代だ。昭和の象徴のような映画「男はつらいよ」にも日本離れした茶髪厚化粧にケバっちいファッションのギャルのマドンナがいくらでも出てくるが、その孫たちがマイルドヤンキー(彼らは概して早婚家系で親子の年齢差が短い傾向がある)であることを考えるとなんだか頭の中がクラクラしてしまう。

 

 ハッキリ言ってもう、老人以上に老人化しているのかもしれない。