奇書として知られる長編小説「ドグラ・マグラ」に登場する象徴的な音のモデルとされる時計が、作者の夢野久作(1889~1936年)の遺品から発見された。九州大学記録資料館に保管されていた。
同作品をテーマにした銅版画展で14~20日、福岡市博多区の「立石ガクブチ店」で初公開される。開場は午前11時~午後7時で入場無料。
小説は「…ブウウ―ンンン―ンンンン…」という蜜蜂のうなるような時計の音で始まる。記憶を失った主人公の「私」は、その音の余韻とともに九州帝国大学精神病棟で目覚め、最後は廊下の端から聞こえる同様の音で締めくくられる。
銅版画展の準備で遺品を整理していた関係者が発見、100年以上前のドイツ製と判明した。孫の杉山満丸さん(58)=福岡県筑紫野市=によると、夢野が住んだ家の柱時計だったとみられ、修理したところ、再び時を刻み始めた。杉山さんは「廊下の端にあった久作の書斎まで、夜は特に響いたはず」と話す。
銅版画展は、東京在住の10人の銅版画作家がドグラ・マグラの世界を独自に描いた作品など計22点を展示。ほかにも直筆の初期草稿や、夢野が九州日報(現西日本新聞)記者時代に取材した関東大震災の記事のスクラップも併せて紹介する。
銅版画展の問い合わせは立石ガクブチ店((電)092・281・4008)まで。〔共同〕
夢野久作、ドグラ、マグラ、マグラ時計