スコットランド住民投票:「独立なら値上げ」心理作戦

毎日新聞 2014年09月13日 11時44分(最終更新 09月13日 19時58分)

英国からの独立に「Yes」の紙を掲げる推進派と「No」を掲げて対抗する独立反対派の男性=英スコットランド・パースで12日、ロイター
英国からの独立に「Yes」の紙を掲げる推進派と「No」を掲げて対抗する独立反対派の男性=英スコットランド・パースで12日、ロイター

 ◇コスト高を転嫁 小売業界相次ぎ表明

 【ロンドン坂井隆之】18日に迫ったスコットランド独立の是非を問う住民投票を巡り、これまで態度を明確にしていなかった企業から独立に対する懸念表明が相次いでいる。特に小売業界からは「独立すれば商品の値上げは避けられない」との声が一斉に上がっており、家計に敏感な有権者への影響も予想される。独立派にとって投票までに経済面での不安を払拭(ふっしょく)できるかがカギとなりそうだ。

 口火を切ったのはデパート大手ジョン・ルイスのメイフィールド議長。11日のテレビ番組で「スコットランドは輸送などでコスト高だが、今までは英国の他地域と同じ値段に抑えてきた。別の国になればそうはいかない」と値上げの可能性に言及した。その後、セインズベリーなどの大手スーパーや、大手衣料品チェーンなども相次いで値上げの可能性を表明。さらにBBC放送などは12日、大手の小売企業が「独立すれば価格上昇を招く」との共同声明を近く発表すると報じた。

スコットランドの位置
スコットランドの位置

 小売業界がにわかに危機感を表明した背景には、世論調査で賛成派が急伸し、独立の現実味が増したことがある。BBCなどは「首相官邸が小売りトップに個別に働きかけている」として、賛成派の切り崩しを狙う政府の「圧力」も背後にあると報じた。

 金融機関のスコットランドからの「離脱表明」も相次いでいる。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)や、スコットランド銀行を傘下に持つロイズ、保険大手のスタンダードライフなどが、賛成が可決された場合は本店登記をスコットランドから他地域に移すと表明した。英政府は独立後のスコットランドが通貨ポンドを使用することを拒否しており、「為替リスクなどから顧客資産を守る」ことを理由としている。

 独立投票の結果が市場と経済に与える影響を見極めるため、オズボーン英財務相と中央銀行・イングランド銀行のカーニー総裁は、20日からオーストラリアで開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を欠席することを決めた。

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