投資でよく使われる「ハイリスク・ハイリターン」という言葉を、皆さんは正しく理解しているでしょうか。「リスクが高いぶんリターンも高くなる」と間違って解釈すると痛い目に遭う可能性があります。「高いリターンを求めれば、それだけリスクは高くなる」と考えるべきなのです。
ここでいうリスクとは運用成果のブレ幅のことです。「リスクが高い」というのはブレ幅が大きく確実性が低いという意味ですから、「リスクが高い金融商品や銘柄だから高いリターンを生む」ととらえてしまうと論理的に矛盾します。
それでも多くの人が誤解していますし、金融機関の営業マンでも「リターンを得るにはもっと積極的にリスクを取りましょう」と顧客に勧めていることがあります。この誤りに気付かないと、安易に高リスクの投資に手を出して大損をする恐れがあるので非常に危険なのですが、なぜそう思い込んでしまうのでしょうか。これには心理的な面も大きく影響しています。図Aは投資理論でリスクとリターンの関係を説明する際によく使われるものです。資本市場線(CML)という右肩上がりの線は横軸のリスクと縦軸のリターンが正の相関関係にあることを表しているだけであって、高いリスクを取れば必ず高いリターンが得られるということを意味しているわけではありません。それなのに「右上に行くほどハイリスク・ハイリターン」だと説明されることが多いのです。
これは行動経済学でいう「認知バイアス」、簡単にいえば心の錯覚です。確かにこの図を単純に見ると右肩上がりになっていますから、リスクを取るほどもうけが大きくなる、と勘違いしてしまうのも無理はありません。人間の心理には複雑なことや難しいことから逃れたいという側面があるため、こういうシンプルな説明に納得しがちなのです。
さらに言葉の言い回しで勘違いしてしまう「フレーミング効果」もあるでしょう。ハイリスク・ハイリターンという言葉はその語順もあって「高リスクのものは高リターン」と解釈しやすいのです。でも決してそんなことはありません。リスクが高くても、手数料が高いため構造的に低いリターンしか投資家の手に入らない商品もあります。