かつて移民の国と謳われた米国では、現在、不法滞在の摘発が強化されている。だがその一方で、収容所に送られた不法滞在者が、タダ同然の賃金で労働を強いられているという。
移民局によれば、昨年は約6万人の不法移民が収容所で働かされた。彼らの日給は1ドル以下で、労働条件も過酷だ。病気でも休むことはできず、早朝や深夜の労働も当たり前という。
リベリア移民のマリアン・マーティンズも、不法滞在で摘発され強制労働を経験。収容所では調理や清掃の仕事を命じられ、断れば独房に監禁すると脅された。彼女の報酬は、仕事の合間の休憩のみだったそうだ。
移民局は、収容所での労働は正式な雇用ではなく、ボランティア・プログラムの一環だと説明する。彼らが受け取っているのは、賃金ではなく給付金。誰一人として労働を強制されていないというのだ。また彼らの労働は、年間 20億ドル(約2000億円)以上かかる収容所の運営経費の削減、ひいては納税者の負担減にもつながっていると言う。「収容所での労働に彼らはやりがいを感じています」と移民局の広報官ジリアン・クリステンセンは弁明する。
だが、専門家は法の網をくぐった搾取だと指摘する。実際、ビザの申請中は不法滞在に当たらないが、その期間に収容されるケースは多い。移民局の真の目的は、不法滞在の規制ではなく「労働力の確保」だという声もある。
収容所の運営で、利益を上げている企業もある。民間企業GEOが管理するジョー・コーリー収容所では、約半数の収容者が近隣の刑務所で出張労働をさせられている。人件費を安く押さえられるので収容所ビジネスの利益率は高く、同社の昨年の収益は1億1500万ドルに上った。
移民を厳しく取り締まる一方で、不法滞在者を大量に雇用し、その労働力に依存する――米国の抱える矛盾は大きい。
COURRiER Japon
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