魚の消費は米国でなぜ減っているのか

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  • BEN DIPIETRO

[image] MCT/Zuma Press

米国での魚の消費量は減少している。写真はシカゴの魚市場

 米国人が食生活を改善し始めているのに、最もヘルシーな食材である魚が鼻であしらわれている。

 平均的な米国の消費者が2012年に食べた魚介類は14.4ポンド(6.54キログラム)で、前年の15ポンドから減少した。これまでの最高は04年の16.6ポンドだった。これは鳥肉の82ポンド、牛肉の57ポンド、豚肉の46ポンドを大きく下回っている。また、この量は諸外国の人たちが食べている魚介類の量よりもはるかに少ない。平均的な日本人は年間120ポンド、スペイン人は96ポンドを食べている。

 米国での魚消費が減っていることは、業界がヘルシーな商品を十分に生かし切れていないことを示している。さまざまな調査が、消費者は魚をどう料理していいのか分からず、価格も比較的高い上、シーフード業界は食肉業界が成果を上げているような大規模販売キャンペーンをできないでいることを示している。

 バンブル・ビー・フーズのクリストファー・リシェウスキー最高経営責任者(CEO)は、3月にボストンで開かれた北米シーフード見本市の会場で、「解決策はまだ見つからないようだ」とし、「魚嫌いの人々もいる。その上、われわれは魚介類の偉大な特性、ヘルシーで栄養価が高いことについて消費者に啓蒙するチャンスを生かしていないし、調理の仕方も教えられていない」と話した。

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1965年をゼロとした米国人の種類別動物性タンパク質消費量の変化

 食品小売業界の動きを追跡しているスーパーマーケットグル・ドット・コムのエディター、フィル・レンパート氏は、魚介類への嫌悪とこれをどう料理するのかが業界にとって最大の問題だと述べるとともに、「2番目はこの業界にまとまりがないことだ。消費促進のために業界が足並みをそろえられるまでは何も変わらない」と語った。

 このほかにも、一部の魚介類には高濃度の水銀が含まれているとの主張、遺伝子組み換え(GM)サーモンの養殖に反対するグループなどが持ち出した不安感、どの種類の魚がヘルシーかといった知識など情報の欠如や混乱も問題だ。

 シーフード企業の関係者は、年間消費量が1965年の34ポンドから2012年には82ポンド近くにまで大きく増加した鳥肉業界に見習いたいと考えている。業界団体の全米水産研究所のジョン・コネリー所長は、シーフード業界が消費者の不安を和らげ、より利用しやすい商品を開発できれば、鳥肉業界が経験したような飛躍的な成長を実現できると述べた。

 全米鳥肉評議会のエコノミスト、ビル・ローニック氏は、シーフードが「新鳥肉(ニュー・チキン)」になれるまでには時間がかかると述べた。同氏は、大きな障害は生産コストで、海から魚を捕ったり、養殖したりする費用は養鶏や養豚よりも大きいとし、「コストを引き下げ、値段をもっと手ごろなものにしなければならない。これは難しい課題だ」と述べた。

 バンブル・ビーは北米最大規模のシーフード会社の1つで、売上高は10億ドル(約1020億円)を超えるが、業界には多くの小規模企業もある。これらの企業はしばしば、1種類の魚だけを扱っており、このため業界全体での魚消費促進キャンペーンへの参加に消極的だと言われている。

 リシェウスキー氏は「われわれは団結して消費拡大キャンペーンのための資金集めを何度も何度も試みたが、非常に難しいことが分かった」と話した。

 バンブル・ビーや、ハイ・ライナー・フーズ、パシフィック・シーフード、トライデント・シーフーズなど他の大手企業は簡単に調理できる新商品で消費者を呼び込もうとしている。バンブル・ビーは昨年、伝統的なマグロや常温保存可能製品ばかりでなく電子レンジで調理できるサーモンやティラピアを発売した。ほかにも、サーモン・ホットドッグ、サーモン・ジャーキー、エビのベーコン詰めなどを販売している企業もある。

 米国で消費されるシーフードの約3分の2は家の外で食べられており、シーフードレストランはその消費減少の影響をじかに感じている。カジュアルレストランのレッドロブスターは過去8四半期のうち7四半期で既存店売り上げが減少し、12-2月期の純利益は8.8%縮小した。同社の親会社ダーデン・レストランツは、物言う投資家バリントン・キャピタル・グループとスターボード・バリューから、一部のチェーン店と不動産事業を分離して公開企業にするよう圧力をかけられている。ダーデンは、レッドロブスターだけを分離する方向で検討している。ダーデンのコメントは得られていない。

 米国内に1200店舗を持つシーフードのファストフードチェーン、ロング・ジョン・シルバーズは提供する魚の種類とその調理法を拡大している。同社は昨年、焼きタラを加え、今年はパン粉を付けてグリルした魚の商品を出す計画だ。同社の最高食品刷新責任者、マリー・チャン氏は、重要なのは、これまでのように前菜として使うだけでなく、サンドイッチやサラダ、スープなどにも利用して若者の人気を得ることが重要で、「われわれにとって必要なのはコストを引き下げ、おいしい商品を提供することだ」と述べた。

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